家づくり
平屋と二階建て、東北ならどっち|後悔しない4つの判断軸
「平屋と二階建て、どちらがいいですか」。モデルハウスでよくいただく質問です。ただ、この問いに答えるには、間取りの好みより先に見ておくべきものがあります。敷地の広さと形です。
身も蓋もない言い方になりますが、平屋か二階建てかは、好みの問題である前に土地の条件でかなりの部分が決まります。逆に言えば、考える順番さえ間違えなければ、延々と悩み続けなくていい問いなのです。
この記事では、全国向けの「平屋のメリット・デメリット10選」ではなく、山形・宮城・福島で建てるという前提に絞って判断の順番を整理します。雪の量と土地の値段が違うだけで、同じ問いの答えが変わるからです。
「平屋が増えている」の前に|山形は平屋が少ない県です
平屋を検討しはじめると、「いま平屋が人気」という記事をあちこちで見かけます。ただ、公的な統計で確かめられる数字は、その印象と少し違うのです。
総務省の住宅・土地統計調査(令和5年)から、一戸建住宅に占める1階建て=平屋の割合を拾うと、こうなります。
| 地域 | 一戸建の総数 | うち平屋(1階建) | 割合 |
|---|---|---|---|
| 全国 | 2,931.9万戸 | 335.4万戸 | 11.4% |
| 宮城県 | 54.3万戸 | 7.4万戸 | 13.7% |
| 山形県 | 29.8万戸 | 2.7万戸 | 9.1% |
| 福島県 | 51.3万戸 | 9.0万戸 | 17.5% |
同じ東北でも、福島県の17.5%と山形県の9.1%では倍近い開きがあります。山形県は、全国平均より平屋が少ない県です。
しかもこの数字は、いま建っている家を数えたもの(ストック)です。全国の平屋比率は2013年の14.0%、2018年の12.8%、2023年の11.4%と、10年間で一貫して下がっています。
「平屋の新築が増えている」という話には、実は公的な裏づけがありません。国の建築着工統計にも、フラット35の利用者調査にも、階数別(平屋か二階建てか)の集計項目そのものがないからです。増加を示しているのは民間アンケート(リクルートの2024年調査では全国22.1%)で、母集団の条件は公開されていません。当社としては「ご相談で平屋の話が出る回数は確かに増えた」という実感までしか言えません。
大事なのは増減そのものより、その一つ手前です。山形で暮らしていると、身近に平屋の実例が少ない。だから比べる材料が手元になく、決めきれない。迷いの正体は、たいていこれです。
判断軸①敷地|延床30坪の平屋に、土地は何坪必要か
最初に決着をつけるべきはここです。数字で出せるので、いちばん早く片づきます。
建築基準法では、敷地面積に対して建てられる建築面積の上限が「建蔽率」で決まっています。建築面積とは、おおまかに言えば建物を真上から見たときの面積です。二階建てなら1階の広さ、平屋なら延床面積とほぼ同じになります。
住宅地でよくある建蔽率60%で計算してみます。延床30坪の平屋なら建築面積も約30坪。必要な敷地は30÷0.6=約50坪です。同じ延床30坪を二階建て(各階15坪)にすれば建築面積は15坪ですから、敷地は約25坪で足ります。
同じ広さの家なのに、必要な土地が倍違う。これが平屋の最大の制約です。
ただし東北では、この50坪でもまだ足りません。冬に車を出し入れするスペース、除雪した雪を寄せておく場所、屋根から落ちる雪の行き先。建蔽率いっぱいに平屋を置くと、雪の置き場がなくなります。
もう一つ、面積が足りていても形で入らないことがあります。旗竿地や間口の狭い土地は、二階建てなら収まっても平屋だと部屋が一列に並んでしまう。日当たりと動線が同時に苦しくなります。
この章のポイント
平屋にするかどうかは、間取りを考える前に敷地で決まります。土地から探す方は、面積・建蔽率・敷地の形と、「雪をどこに寄せるか」を先に確認してください。この4つが揃わない土地では、平屋は無理に成立させないほうがいい選択です。

判断軸②お金|坪単価は上がる。それでも東北で成り立つ理由
同じ延床面積なら、平屋は基礎と屋根の面積が二階建ての約2倍になります。地面に接する床が2倍、雨と雪を受ける屋根が2倍。形の話なので、どこで建てても同じです。だから坪単価は上がりがちです。
正直に書きますが、「平屋は坪単価が○割高い」という数字に公的な裏づけはありません。国も住宅金融支援機構も、階数別の工事費を集計していないからです。よく見かける「1〜2割高い」は各社の経験値で、仕様や規模、屋根の形で変わります。ご自身の条件での差額は、同じ間取り条件で見積もりを取って比べるしかありません。
一方で、建物の坪単価だけを見ていると判断を誤ります。平屋で増えるのは建物代だけではなく、必要な土地の代金も増えるからです。そしてここが、東北で家を建てる人にとって決定的に有利な点になります。
住宅金融支援機構の2025年度フラット35利用者調査では、土地付注文住宅の土地取得費は東北地区が883.3万円でした。全国平均1,575.3万円の半分強で、全国11地区のなかで最も低い数字です。参考までに、南関東は2,132.7万円あります。
平屋の最大の壁は、土地を広く用意しなければならないこと。その壁がいちばん低い地域が東北です。首都圏なら「平屋は贅沢」で話が終わるところが、山形や福島では現実的な選択肢として残ります。
| お金が動くところ | 平屋 | 二階建て |
|---|---|---|
| 基礎・屋根の工事量 | 約2倍になる | 抑えられる |
| 必要な敷地=土地代 | 広い(延床30坪・建蔽率60%で約50坪) | コンパクト(同条件で約25坪) |
| 階段・2階の設備 | 不要 | 階段+2階トイレ等が必要になりがち |
| 将来の外壁・屋根メンテの足場 | 低く小さく済む | 高い足場が必要 |
| 家屋の固定資産税 | 理屈のうえでは高く出やすい | — |
最後の固定資産税だけ補足します。木造家屋の評価額は、屋根や基礎などを部分ごとに点数化して積み上げる仕組みで、屋根と基礎の点数は建床面積をもとに計算されます(総務省の固定資産評価基準)。同じ延床でも建築面積が大きい平屋のほうが、理屈のうえでは評価額が高く出やすいということです。
ただし実際にいくら差が出るかは、仕様と自治体の判断によります。金額を断定できる公的資料は見つからなかったので、ここでは仕組みの説明までにとどめます。
総額の比較は、建物と土地を切り離さずに見てください。東北で建てる場合の相場と内訳は注文住宅の相場と総額の記事にまとめています。
判断軸③冬|「平屋は寒い」は正しくありません
平屋を検討する方から、いちばん多くいただく不安がこれです。結論から言うと、「平屋は寒い」は正確ではありません。ただし、性能の効き方は二階建てと違います。
断熱性能を表すUA値は、家から逃げる熱の量を外皮(屋根・壁・床・窓)の面積で割った平均値です。面積で割っているので、家の大小にかかわらず比べられる数字なのです。
同じ延床で平屋と二階建てを比べると、平屋は屋根と床の面積が約2倍になり、そのかわり外壁は小さくなります。差し引きすると、外皮面積の合計は平屋のほうが大きくなります。
つまり、UA値が同じでも、家全体から逃げていく熱の総量は平屋のほうが多い。これが「平屋は寒い」と言われるときの、実際の中身です。
ところが話はもう一段あります。屋根や床は、壁より断熱を厚くしやすい部位です。同じ仕様で設計すれば、平屋のUA値がむしろ良く出ることもあります。「平屋だから寒い」ではなく、「平屋は断熱への投資が素直に体感へ返ってくる」と理解するのが正しいところです。
東北でUA値を語るなら、地域区分もセットで見てください。民間基準のHEAT20 G3水準は、3地域で0.20、4地域で0.23と数字が違います。米沢市や南陽市は3地域、山形市は4地域です。同じ「G3相当」と言っても、南陽で必要な数字のほうが厳しいということです。
二階建てにも固有の弱点があります。階段と吹抜けは上下の空気をつなぐので、性能が足りないと1階と2階で温度差が出ます。平屋はワンフロアで温度が均一になりやすく、この点では有利です。UA値とC値の読み方は高気密・高断熱の記事で詳しく書きました。

判断軸④雪と地震|屋根に載る重さと、建物の軽さ
ここは雪国だけの論点です。全国向けの平屋記事には、まず出てきません。
積雪荷重は「積雪の単位荷重×屋根の水平投影面積×垂直積雪量」で計算します(建築基準法施行令86条)。多雪区域では単位荷重が積雪1cmあたり30N/㎡以上と、一般地域の20N/㎡より重く設定されます。
この式で効いてくるのが、屋根の水平投影面積です。同じ延床なら平屋の屋根面積は二階建ての約2倍。載る雪の総重量も、単純に約2倍になります。
山形市は市の全域が多雪区域に指定されていて、中心部の垂直積雪量は1.2mです(山形市公表資料)。屋根に1.2mの雪が載った状態を前提に構造を決める、ということです。
さらに多雪区域では、地震力の計算に積雪荷重の一部(0.35倍)を上乗せする決まりがあります。雪が載ったまま揺れる可能性を織り込むためです。この考え方は耐震等級3と制振ダンパーの記事で詳しく扱いました。
とはいえ、平屋が構造的に不利というわけではありません。平屋は建物そのものが軽く、重心も低いので、地震のときに建物へ働く水平方向の力は二階建てより小さくなる傾向があります。
雪では不利側に、地震では有利側に働く。両方が同時に効くので、「平屋だから安心」も「平屋だから心配」も、どちらも雑な結論です。確かめるべきは、雪の重さを入れたうえで構造を検討しているかどうか、その一点だけです。
依頼先を比べている段階なら、「多雪区域として、屋根に雪が載った状態で構造を検討していますか」と聞いてみてください。答え方で、その会社が雪をどれだけ日常として扱っているかが分かります。
屋根の雪の納め方は、落とす(落雪式)・融かす(融雪式)・載せたまま支える(耐雪式)に大きく分かれます。行政の技術資料でも使われる分類です。どれを選ぶかで、敷地に必要な余白も屋根の形も変わります。平屋は屋根が大きいぶん、この判断の影響も大きくなります。雪国で平屋を設計するときの具体的な勘所は雪国の平屋の記事にまとめました。

正直に言うと|どちらを選んでも残る弱点
二階建ての弱点:10年後、2階が静かになる
お子さんが家を出たあと、2階に上がる回数が減っていく。実際によく聞く話です。掃除も窓の開け閉めも1階で済むようになり、いつのまにか2階が物置に近い使い方になる、と。
ただ、これも決めつけはできません。在宅ワークの部屋として生き続ける例もあれば、帰省やお客様のための部屋として使われ続けている例もあります。「2階は将来無駄になる」と断じるのは、単に想像の範囲が狭いだけです。
平屋の弱点:土地と、窓の高さ
平屋の制約は、この記事でずっと書いてきた敷地の広さです。そしてもう一つ、すべての窓が地面と近い高さに並ぶこと。道路や隣家からの視線、防犯面が気になるという声はよくいただきます。
ここは設計で解ける範囲が広い部分でもあります。中庭を内側に取り込む、視線の抜ける方向を計算して窓を置く、植栽とセンサー照明を組み合わせる。ただし後から直すのは難しいので、間取りを決める段階で織り込んでおく必要があります。
当社の場合
当社は断熱を最高グレードでHEAT20 G3に対応させています。最高グレードのUA値は0.18で、東北のG3水準(3地域0.20/4地域0.23)を上回る数字です。
気密は実測で確かめます。C値は0.1〜0.3のレンジで、0.1は最も良い棟の記録です。構造は耐震等級3に対応し、加えて制振ダンパーevoltzで揺れ自体を減らす二段構えにしています。
参考までに、外部からの評価も一つご紹介します。当社は断熱・気密・耐震等級・制振部材の有無という4項目について、制振ダンパーメーカーのevoltz社が全国6,366社を数値化した調査で1位の評価をいただいています(同社調べ/2025年11月時点/最高グレード仕様での評価)。
はじめは二階建てで考えていたのですが、うちの敷地に平屋を置いた図面を見せてもらって気が変わりました。数字で説明されると、迷いが「好み」の話に戻るんですね。
平屋と二階建て、どちらが正解かは、その敷地に両方の図面を置いてみると意外にあっさり決まります。土地の条件とご予算に合わせて、どちらが無理なく成立するかを見ていくのが、いちばん早い道だと思います。
この記事のまとめ
- 山形県の一戸建に占める平屋は9.1%。全国11.4%・宮城13.7%・福島17.5%で、山形は平屋が少ない県(総務省・令和5年)
- 建蔽率60%なら、延床30坪の平屋に必要な敷地は約50坪。同じ延床の二階建ては約25坪で足りる
- 平屋は基礎と屋根が約2倍で坪単価は上がりがち。ただし「○割高い」という公的統計は存在しない
- 東北の土地取得費は883.3万円で全国11地区中最低。平屋の最大の壁=土地の広さが、いちばん低い地域
- 「平屋は寒い」は誤り。外皮面積が大きいぶん熱の総量は増えるが、屋根・床は断熱しやすく、性能への投資が素直に効く
よくある質問
延床30坪の平屋を建てるには、どれくらいの土地が必要ですか?
建蔽率60%の住宅地なら、建築面積30坪÷0.6=約50坪が計算上の最低ラインです。同じ延床30坪の二階建てなら約25坪で足ります。ただし東北では駐車スペースと除雪した雪を寄せる場所、屋根から落ちる雪の行き先が必要なので、計算上の50坪では窮屈になりがちです。敷地の形によっても入り方が変わるため、土地探しの段階で確認してください。
平屋と二階建て、総額ではどちらが安く済みますか?
建物だけを見れば、同じ延床なら基礎と屋根が約2倍になる平屋のほうが坪単価は上がりがちです。ただし総額は土地代を含めて比べるものなので、地価によって逆転します。2025年度のフラット35利用者調査では東北地区の土地取得費は883.3万円で、全国平均1,575.3万円の半分強、全国11地区で最も低い水準でした。土地が安い地域では、広い敷地を必要とする平屋の不利が小さくなります。
平屋は二階建てより地震に強いのですか?
平屋は建物が軽く重心も低いため、地震で建物に働く水平方向の力は小さくなる傾向があります。一方で屋根面積が約2倍になるため、載る雪の総重量は増えます。多雪区域では地震力の計算に積雪荷重の一部を上乗せする決まりがあるので、雪込みで検討しているかどうかが実際の差になります。階数だけで強弱は決まりません。
平屋のほうが固定資産税は高くなりますか?
木造家屋の評価額は、屋根や基礎などを部分ごとに点数化して積み上げる仕組みで、屋根と基礎の点数は建床面積をもとに計算されます。同じ延床でも建築面積が大きい平屋のほうが、理屈のうえでは高く出やすいことになります。ただし実際の差額は仕様と自治体の判断によるため、断定できる公的な資料はありません。詳しくはお住まいの市町村にご確認ください。
※本記事の情報は2026年9月時点です。平屋の割合は総務省「住宅・土地統計調査」(令和5年)、土地取得費は住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」、建蔽率・建築面積・積雪荷重の扱いは建築基準法および同施行令、垂直積雪量は山形市公表資料、家屋評価の仕組みは総務省の固定資産評価基準、断熱水準はHEAT20の公表値に基づきます。制度・数値は更新されるため、最新は公式および当社でご確認ください。


