家づくり
注文住宅の相場|東北の平均総額4,460万円の内訳と現実
「注文住宅って、結局いくらかかるんですか」。モデルハウスでいちばん多くいただく質問です。ネットで調べると2,000万円台から5,000万円台まで並んでいて、どれが自分の話なのか分からない。そういう状態でお越しになる方がほとんどです。
数字がばらついて見えるのには、はっきりした理由があります。相場という言葉が指しているものが、記事ごとに違うんです。建物だけの値段、土地を含めた値段、引っ越し代まで入れた値段。どれも同じ「相場」という言葉で書かれています。
そこでこの記事では、公的な調査の数字を使って、東北で家を建てる場合の総額と内訳を分解してみます。全国平均との差がどこから生まれているのか。そして相場に合わせて予算を削るとき、東北では何を削ってはいけないのか。設計の現場から、できるだけ正直に書きます。
「注文住宅の相場」がバラバラに見える理由
相場の数字がかみ合わないのは、比べているものが違うからです。注文住宅の費用には、大きく分けて3つの言い方があります。
1つめは建物だけの値段。すでに土地を持っている人、あるいは親御さんの敷地に建てる人が見るべき数字です。2つめは土地と建物を合わせた値段。土地探しから始める人はこちらになります。
3つめは、それに引っ越し代や家具・カーテン、外構までを足した「暮らし始めるまでの総額」。この3つは数百万円から千万円以上の幅で違ってきます。同じ「相場」という言葉で並んでいれば、混乱するのが当然です。
そこで本記事では、共通の物差しとして住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」を使います。全国で年間3万5千件規模のデータがある調査で、地区別の集計も公表されています。最新は2025年度版で、2026年7月に公表されました(2025年4月〜2026年3月に承認された案件の集計)。
この章のポイント
相場の記事を読むときは、まず「土地を含む数字か、含まない数字か」を確認してください。ここを間違えると、予算の出発点が1,000万円近くずれます。
東北の平均総額は4,460万円|全国との差852万円の中身
まず結論から。同じ調査の「土地付注文住宅」で見ると、全国平均は総額5,312.9万円、東北地区の平均は4,460.6万円でした。差は852万円ほどあります。
| 項目 | 全国平均 | 東北地区 | 差 |
|---|---|---|---|
| 建設費(建物) | 3,737.6万円 | 3,577.4万円 | 160.2万円 |
| 土地取得費 | 1,575.3万円 | 883.3万円 | 692.0万円 |
| 所要資金(合計) | 5,312.9万円 | 4,460.6万円 | 852.3万円 |
| 住宅面積 | 110.3㎡ | 107.7㎡ | 2.6㎡ |
| 年収倍率 | 7.8倍 | 7.0倍 | 0.8倍 |
住宅金融支援機構「2025年度 フラット35利用者調査」土地付注文住宅の平均値より作成。
この表でいちばん見ていただきたいのは、852万円の差の内訳です。土地で692万円、建物では160万円。差の約8割が土地代から来ています。
建物の差が160万円しかない、というのは家づくりを考えるうえでかなり重要な事実だと思います。東北は「家が安く建つ地域」ではありません。「土地が安く買える地域」なんです。
住宅面積を見ると、この解釈がさらに裏づけられます。全国110.3㎡に対して東北は107.7㎡。坪でいえば1坪弱の差しかありません。小さい家にして節約している、という話ではないわけです。
ちなみに東北の土地取得費883.3万円は、同じ調査の全国11地区のなかで最も低い数字です。次に低い北関東信越が927.4万円、いちばん高い南関東は2,132.7万円。同じ「注文住宅を建てる」でも、土地にかかるお金は地域で2倍以上違います。
ここで得られる考え方
東北で建てる強みは、浮いた土地代を建物の性能とデザインに回せることです。首都圏と同じ総額を出さなくても、家そのものの中身では引けを取らない選択ができます。

土地の値段は県でここまで違う|仙台と福島市の差
とはいえ「東北は土地が安い」で終わらせると、実務では危険です。東北のなかでも土地の水準はかなり違います。
2026年(令和8年)の地価公示で、住宅地の平均価格を見てみます。宮城県は91,100円/㎡、なかでも仙台市は135,700円/㎡。一方で福島県は38,000円/㎡、福島市は51,400円/㎡でした。
仮に40坪(約132㎡)の土地に置き換えると、仙台市の住宅地平均で約1,790万円、福島市の平均で約680万円という計算になります。同じ広さで1,100万円以上の開きです。
ここで前章の数字と突き合わせると、現実が見えてきます。東北平均の土地予算883万円では、仙台市の平均的な住宅地に40坪を確保するのは難しい。仙台で建てるなら、土地を小さくするか、エリアを郊外に広げるか、建物の予算を見直すか。この三択をどこかで通ることになります。
地価公示は標準地の評価額の平均です。実際の売買価格とは一致しませんし、造成費・仲介手数料・上下水道の引き込み費用は別にかかります。土地の資金計画は、必ず「その土地に建てる場合の見積り」で確認してください。
山形県の土地は、公的な平均価格が公表されていない
山形県で家を建てる方に、正直にお伝えしたいことがあります。県が公表している令和8年の地価公示資料には、住宅地の変動率(県全体で+0.2%、山形市で+0.5%)は載っていますが、宮城県や福島県のような市町村別の平均価格の集計表が見当たりません。
つまりネット上で見かける「山形市の坪単価は◯万円」という数字は、民間サイトが標準地のデータを独自に集計したものです。参考にはなりますが、公式発表の平均値ではない。この違いは知っておいたほうがいい部分だと思います。
だから当社では、山形県内の土地について相場表の数字で説明することはしません。実際に出ている物件と、その土地に建てた場合の資金計画書で見ていただくほうが早いからです。同じ山形県でも寒さの区分が違えば必要な断熱性能も変わります(詳しくは南陽市で注文住宅を建てるなら|赤湯の土地選びと「3地域」の寒さの話)。
建物にはいくらかけているのか|延床33坪で3,577万円
土地の話が続いたので、建物に戻ります。東北で土地付注文住宅を建てた人の平均は、延床107.7㎡(約32.6坪)で建設費3,577.4万円。土地を持っている人が建てた注文住宅では、117.2㎡(約35.4坪)で3,853.5万円でした。
坪で割ると、どちらも110万円前後になります。「思っていたより高い」と感じた方が多いかもしれません。
ただし、この数字をそのまま住宅会社の広告の坪単価と比べるのは避けてください。調査上の「建設費」に含まれる範囲と、会社ごとに違う坪単価の計算方法は、同じとは限らないからです。分子と分母がずれた比較は、判断を確実に狂わせます。坪単価という数字の扱い方は注文住宅の坪単価と総額|東北で後悔しない予算の考え方で詳しく書きました。
この5年で2割上がった|先に建てた人の金額は参考にならない
「相場」で失敗しやすいのが、身近な人の金額をそのまま基準にしてしまうことです。数年前に建てたご友人の総額、あるいは親御さんの時代の感覚。これが今はかなりずれています。
同じ調査で全国平均の推移を追うと、注文住宅(土地を含まない)の建設費は2020年度の3,532.5万円から2025年度の4,259.8万円になりました。5年で約20.6%、金額にして727万円の上昇です。
国土交通省の建設工事費デフレーターでも同じ傾向が出ています。木造住宅の指数は2020年度を100として2025年度が122.3。実額の調査と物価の指数、両方から2割前後の上昇が確認できます。
だから「3年前に◯◯万円で建てられた」という話を基準に予算を組むと、最初から足りません。ここは検討の入口で必ず確認していただきたい部分です。
年収倍率で見ると、東北は少し余裕がある
もう一つ、資金計画で見ておきたい指標があります。総額が世帯年収の何倍かを示す年収倍率です。
東北の土地付注文住宅は平均7.0倍(世帯年収685.2万円)。全国平均は7.8倍(同742.2万円)でした。年収の水準は全国より低いのに、倍率は全国より低く収まっている。土地代が抑えられている効果が、ここにも出ています。
とはいえ7倍は決して軽い数字ではありません。返済は総額ではなく月々の金額で考えたほうが、生活の実感に近づきます。借入の段取りは知ってると便利!住宅ローンの流れもあわせてご覧ください。

相場に合わせて削るとき、東北で触ってはいけない費用
予算が合わないとき、いちばん削りやすいのは断熱・気密・窓の性能です。図面の上では同じ間取りに見えますし、完成した瞬間の見た目もほとんど変わりません。だから最初に候補に挙がります。
ただ東北では、この判断が後から効いてきます。暖房を使う期間が長いぶん、性能の差が毎月の光熱費と冬の体感にそのまま出るからです。UA値やC値がどう光熱費に結びつくかは高気密・高断熱をUA値とC値で読む|東北の光熱費と体感で語る家にまとめています。
もう一つ、金額として無視できない理由があります。性能を上げると戻ってくるお金があるのです。
2026年の補助と、性能で変わる税制
国の補助事業として「みらいエコ住宅2026事業」が動いています。新築の補助額は住宅のタイプと地域区分で決まり、東北の多くが入る1〜4地域では次のようになっています。
| 住宅タイプ | 補助額(1〜4地域) | 対象世帯 |
|---|---|---|
| GX志向型住宅 | 125万円/戸 | 制限なし(全世帯) |
| 長期優良住宅 | 80万円/戸 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
| ZEH水準住宅 | 40万円/戸 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
「みらいエコ住宅2026事業」公式サイトより(2026年8月時点)。5〜8地域は別の金額が設定されています。地域区分は市町村ごとに定められているため、建設地の区分をご確認ください。
注意していただきたいのは、この補助が予算枠で動いていることです。公式サイトが公開している消化状況では、GX志向型住宅の枠は2026年8月時点で5割を超えています。枠が埋まれば、性能を満たしていても受け取れません。
対象になるのは2025年11月28日以降に基礎工事に着手したもので、交付申請は遅くとも2026年12月31日まで。逆算すると、着工の時期そのものが補助額を左右します。
住宅ローン控除も、住宅の省エネ性能の区分によって借入限度額が変わる仕組みです。ただし2026年(令和8年)入居分の限度額について、国税庁の公式解説は本記事作成時点でまだ更新されていません。金額を前提に資金計画を組む場合は、必ず国税庁または税務署で最新の内容をご確認ください。当社でも最新の情報でご案内します。
ここまでを踏まえると、性能を削って総額を下げる作戦は、東北ではあまり計算が合いません。補助と税制で戻る分を捨てたうえで、毎月の光熱費を長期間払い続けることになるからです。
逆に、見直す余地があるところ
では何を調整するか。当社が実際にご相談の場でよく触るのは、次のあたりです。
- 延床面積(1坪減らせば、建物と外構の両方が下がる)
- 間取りの複雑さ(凹凸を減らすと、外壁面積と工事の手間が減る)
- 設備のグレードと造作の量(後から足せるものを見極める)
- 土地のエリアと広さ(駅からの距離を少し譲ると、選択肢が広がる)
面積と形は、あとから変えられません。設備や造作は、暮らし始めてから足せるものもあります。この順番で考えると、削った結果として後悔する確率がぐっと下がります。
当社の場合|総額から逆算して性能を決める
坪単価は、当社にもあります。聞かれればお伝えします。ただ、その数字だけで判断していただくことはおすすめしていません。
お金の面は、資金計画書を作成してご説明します。建物本体の金額だけでなく、土地や外構、諸費用まで含めた形で見ていただくためです。
本体価格だけで話を進めると、あとから外構や地盤改良が出てきて計画が崩れます。特に東北は、除雪を考えた駐車スペースや雪の置き場所の取り方で外構費が動きやすい地域です。内訳まで開いて見ていただいたほうが、安心して中身の話ができます。
そのうえで性能のグレードを決めます。当社の断熱は最高グレードでHEAT20 G3に対応し、そのUA値は0.18。東北のG3水準は3地域で0.20、4地域で0.23ですから、これを上回る数字です。気密は実測でC値0.1〜0.3のレンジ、最も良い棟で0.1を記録しました。構造は耐震等級3に加えて、制振ダンパー「evoltz」で揺れ自体を減らす二段構えにしています。
断熱・気密・耐震・制振の4項目については、制振ダンパーメーカーのevoltz社が全国6,366社を数値化した調査で1位の評価をいただいています(同社調べ/2025年11月時点)。
ただし正直にお伝えすると、この評価は最高グレードでの仕様に基づくものです。G3以下のグレードもあり、全棟がG3というわけではありません。C値0.1も最も良い棟の記録値です。
どの水準を狙うかは、土地の寒さの区分とご予算に合わせて決めていきます。省エネ性能で受けられる補助額も変わるので、そこまで含めて総額で比べていただくのがいちばん納得しやすいはずです。当社は省エネ性能の第三者評価として、ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジーを12年連続で受賞しています。

資金計画書で土地と外構まで含めた金額を見せてもらえたので、途中で予算の話に戻らずに、間取りとデザインの相談に集中できました。
土地探しからのご相談も承っています。モデルハウスは山形(平清水)・南陽(赤湯)・福島(太平寺)の3拠点。実際の性能を体感していただきながら、ご予算に合った現実的な進め方をご提案します。
この記事のまとめ
- 東北で土地から建てた場合の総額は平均4,460.6万円。全国平均5,312.9万円との差852万円のうち約8割は土地代で、建物の差は160万円ほど=東北は「家が安い地域」ではなく「土地が安い地域」
- 東北の中でも土地の水準は大きく違う。住宅地の平均は仙台市135,700円/㎡、福島市51,400円/㎡(2026年地価公示)
- 建物は延床33坪前後で3,577万円が平均。坪で割った数字を他社の坪単価と直接比べない
- 建設費は5年で約2割上昇(全国平均3,532.5万円→4,259.8万円)。数年前に建てた人の金額を基準にすると足りない
- 性能を削って総額を下げると、補助(GX志向型で125万円)と光熱費の両方で不利になる
よくある質問
注文住宅の相場は、東北ではいくらですか?
住宅金融支援機構の2025年度フラット35利用者調査では、東北地区で土地から購入して建てた場合の平均が総額4,460.6万円(建設費3,577.4万円+土地取得費883.3万円)でした。すでに土地がある場合の建設費の平均は3,853.5万円です。
東北が全国平均より安いのは、家を小さくしているからですか?
いいえ。住宅面積は全国110.3㎡に対して東北107.7㎡で、1坪弱の差しかありません。総額差852万円のうち約8割は土地取得費の差で、建物の建設費の差は160万円ほどです。
山形市の土地の坪単価はいくらですか?
山形県が公表している令和8年の地価公示資料には住宅地の変動率(山形市+0.5%)は載っていますが、宮城県や福島県のような市町村別の平均価格の集計表が見当たりません。ネット上の坪単価は民間サイトの独自集計であり、公式発表の平均値ではない点にご注意ください。実際の物件と総額でご確認いただくのが確実です。
予算が足りないとき、どこから削るのが良いですか?
延床面積、間取りの凹凸、設備のグレードと造作の量、土地のエリアと広さから検討します。断熱・気密の性能は最後まで守ることをおすすめします。東北は暖房期間が長く光熱費に直結するうえ、補助金や税制の優遇も省エネ性能で決まるためです。
※本記事の情報は2026年8月時点です。費用の数値は住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」、建築費の推移は同調査および国土交通省「建設工事費デフレーター」、地価は令和8年地価公示(国土交通省・各県公表資料)、補助制度は「みらいエコ住宅2026事業」公式サイトに基づきます。制度の内容・予算枠・税制は変更されるため、最新は公式および当社でご確認ください。


